2018年6月に訪ねた神戸市にある企業博物館「竹中大工道具館」についてのご紹介です。
神戸で所要があった際、直前に2時間くらいの余裕がありました。
神戸駅周辺をちょっと観光しようかな、と考えていたところ少し前に知ったこの施設。
きっかけは、トリップアドバイザーの「行ってよかった!工場見学&社会科見学ランキング」でランクインしたことでした。
竹中大工道具館について
大阪市に本社をおく大手ゼネコン(正確にはスーパーゼネコン)の竹中工務店が所有・運営する企業博物館。
その趣旨と概要は(竹中大工道具館 概要より)
消えてゆく大工道具を民族遺産として収集・保存し、さらに研究・展示を通じて後世に伝えていくことを目的に、1984年、神戸市中山手に設立されたのが日本で唯一の大工道具の博物館「竹中大工道具館」です。 今日までに収集した資料は32,000 余点
現在の建物は、2014年に本社跡地に建築され、リニューアルオープンからまだ数年。
新神戸駅からのアクセス
山陽新幹線の新神戸駅から徒歩5分もかからない好立地。
駅の改札を出たところの観光案内所では、訪ねる方も多いのか丁寧に道順を教えてくださいます。
陸橋を渡りきった先、右の白いフェンス越しに進みます。
フェンスの奥に見える森は竹中大工道具館の敷地。
駅前ですが閑静な住宅街の中にあります。 迷う余裕もなく、徒歩5分ほどで到着。
「大工道具」という響きから”ガテン系”の施設をイメージしてしまいますが、まるで高級料亭か旅館のような入口です。
平屋の落ち着いた佇まいですが、展示施設は地階を中心に広がっています。
500円の入館料を払い展示室内へ。
チケットとリーフレットには”鉋(かんな)”のイラスト
出張や旅行者の立ち寄りにも配慮
エントランスには無料のコインロッカーも完備されており、小型のキャリーケースを預けることができました。
新神戸駅から至近距離ということで、新幹線を降りて三ノ宮や有馬温泉などへ向かう途中の立ち寄りも十分に配慮されているのだと思います。
竹中大工道具館の建築と展示内容
エントランス空間からこだわりを感じる建築
撮影し忘れたのですが、玄関の扉やエントランスの空間も建築会社のプライドをかけた素晴らしい建築なので必見。
そして、順路は地下へ
建物の正面からは想像できないくらいの広い空間が広がっていました。
ガラス張りの階段から見える景色もすべて計算されているようですし、近代的でありながら木をふんだんにつかった和風建築へのこだわりが感じられます。
展示室はいくつかのテーマに分かれていますが、地階に入ってまず目に飛び込んでくるのがこちら
地下1階展示室 シンボルは唐招提寺の柱の原寸大模型
竹中工務店の創業は、江戸時代前期の1610年。
織田信長の元家臣であった初代 竹中藤兵衛正高が尾張国(名古屋)で創業しました。
当時は、神社仏閣の修繕や造営に携わっていたそうです。
実はこの修復中に唐招提寺を訪ねていました、私。(2007.4撮影)
この時は「せっかく来たのに何よっ」と思ったものでした(建屋内は、簡単なVTRとパネル程度で、修復工事の現場を見学できるような演出はありませんでした)
その後、再訪した時にお堂の一角で修復の様子のパネルや構造物の模型などが展示されていたのを記憶しています。あれが竹中工務店の 仕事 だったんですね。
ちなみに私は、建築関係の仕事はおろか、まったくの素人。
ただ単に寺社めぐり好き&工事中な現場が大好き♡という人間です(笑)
今回こうやって旅の履歴がこのミュージアムにつながったことにはちょっと感動です。
すっかり脱線しましたが、いよいよ展示室内へ
展示にも「美学」を感じる美しい展示室
専門的なことばが並ぶ説明パネルは素人には少々難解。
土日祝には、ボランティアによるガイドツアーが開催されているようで、少し前を数名の方たちが進んでいましたが、今回はゆっくり参加することができず断念。
展示の雰囲気や理解できそうなものを中心に見学してまいりました。
この大鋸(おが)の解説だけちょっと聞きました(^_^;)
室町時代から安土桃山時代にかけて登場した、一人で挽ける大鋸の登場で製材が大きく革新したそうです。
さらに進んで行くと、このミュージアムの真骨頂!?大工道具がずらりと並んでいます。
展示だけでなく、手前には実際に触れられるような演出もあり、素人は普段なかなか触れることのない大工道具の重さや形状など体感できます。
専門的な楽しみ方から素人的な楽しみ方までできる空間です。
この展示すらアートと思えるほど美しく、それでいて実例もわかりやすく展示されているのです。
寺社建築に見られる装飾の彫刻に使われる道具の展示
外国の大工道具の展示もありますが、やはりこれだけ道具が細分化されているのは日本人の器用さゆえのことでしょう。
続いて地下2階の展示ルームへ
地下2階展示室 シンボルは”スケルトン”茶室
角度的にうまく撮れていないのですが・・・茶室の壁や天井の構造がわかるようになっています。
襖や畳の”解体模型"もあります。
身近に和室が少なくなった昨今、気候にあわせた構造や繊細さを改めて見直す機会になりそうです。
鍛冶職人にスポットを当てた 「名工の輝き」
大工の仕事には、すぐれた道具が必須です。ここではその道具を作る鍛冶職人にスポットを当てています。
明治時代に活躍した名工の千代鶴是秀の作業場の再現
写真の撮り方がよろしくないのですが、光り輝く工具の刃先が展示された薄暗いこの空間は、まるで宝石店にいるかのような雰囲気。照明にもこだわりがありそうです。
ワークショップ&ライブラリー
こちらのルームでは、手仕事を体験できるワークショップが開催されていました。
将来の棟梁、頑張れっ!
ワークショップは、週末や夏休みなどを中心に開催されています。
予約制なので、興味のある方は、あらかじめホームページで情報収集&予約をしてお出かけください。
その隣には、ライブラリースペース
右の木(丸太)の奥には、様々な木の断面の様子や香りが体験できるスペース
私は祖父が製材関係の仕事をしていたこともあり、幼少の頃は作業場にふんだんにあったおがくずや木の切れ端が格好のオモチャでした。木の香りに癒しを感じる人は多いと思いますが、私は人一倍それが強いかも。
ぜいたくな和風空間が広がる休憩室
玄関を出て、建物の奥にある休憩室をちょっぴりのぞいてきました。
すぐ近くに新幹線の駅があるとは思えないほど静かで雅な空間です。
休憩室は椅子とテーブルだけですが、その家具も洗練されています。
この建築も見る人によっては立派な作品として参考になると思います。
見学所要時間について
展示室は駆け足でめぐって1時間弱。
もう30分余裕があればガイドツアーなどがじっくり楽しめると思います。
竹中大工道具館公式サイト
帰りがけに受付の方から偶然お聞きした話の中で、名古屋城天守閣木造再建に竹中工務店が選定されたということを知りました。
先日完成したばかりの名古屋城本丸御殿では”工事中”の頃から気になり、すっかりはまってしまった私としては、このタイミングで竹中大工道具館を訪れたことにも”運命”を感じた次第です。この先、竹中工務店の”仕事”をぜひこの目で見たいと思うのでした。
(※本丸御殿は他社JVの施工です)
次回の記事では、その名古屋城についてお伝えしたいと思います。