トヨタ自動車といえば愛知県豊田市に本社を構える世界的トップメーカーです。
企業としては愛知県発祥ですが、その歴史をたどると静岡県、浜名湖の西にある湖西市(こさいし)郊外の田園地帯からはじまっています。
この記事では、トヨタグループの創業者となる豊田佐吉氏の生まれ故郷にある施設をご紹介します。
- 豊田佐吉の生家でトヨタ発祥の歴史をたどる
- 駐車場も入館料もすべて無料の記念館
- 一山ぐるりと散策できる自然豊かな記念館
- 裏山を展望台まで登ってみた!
- 記念館周辺の豊田佐吉ゆかりの地
- まとめ
- あわせて見学をおすすめしたい施設
豊田佐吉の生家でトヨタ発祥の歴史をたどる
豊田佐吉氏の築いた豊田自動織機製作所(現.豊田自動織機)が、分社化してできたのが現在のトヨタ自動車だということは知らない方も多いと思います。
会社組織としては愛知県で創業していますが、自動織機を製品にするまでの研究、開発の日々を過ごした地(生家跡)が豊田佐吉記念館として公開されています。
車がないとちょっと不便な場所です。(1日数本JR鷲津駅間を結ぶコミュニティバスが運行)
湖西市は、現在ではスズキの組み立て工場をはじめ自動車部品メーカーが集積する町になっていますが、この辺りは昔ながらの風景が変わらず残っています。
駐車場も入館料もすべて無料の記念館
昔のちょっといいお屋敷風情の門をくぐります。入館無料です。
特に受付はありませんので自由見学となります。
門を入って左に豊田佐吉(以降 敬称略)の銅像があります。
佐吉は1867(慶応3)年、明治維新の前年という激動の年にこの地で生まれました。
一山ぐるりと散策できる自然豊かな記念館
発明に没頭した小屋や生家などを整備した施設となっています。背後の山までが記念館の敷地です。
時間があれば赤い矢印にそって展望台をまわるコースがオススメ。施設などの見学を含めても1時間ほどあれば余裕です。
時間がない方は、地図右の展示室と納屋、地図左の生家をさくっと回って30分です。
展示室
まずはここで学びましょう! 芳名帳も用意されていますので記念に一筆どうぞ。
映像の冒頭には佐吉の孫であり、現名誉会長の豊田章一郎氏のメッセージもあります。
【2023.8追記】豊田章一郎氏は2023年2月逝去されました。その際、棺を乗せた車が生前親しんだ(祖父・父の生誕地である)記念館や湖西市内をドライブされたそうです。謹んでご冥福をお祈り申し上げます。
豊田佐吉の生涯を紹介するVTRが5か国語ほどで用意されています。
豊田佐吉が研究に明け暮れた日々、そしてトヨタ自動車の歩みを見届け昭和初期に人生の幕を閉じるまでの生涯が紹介されています。
また館内には創業の精神や社訓、さらには代表的な発明品が展示されています。
そもそも自動織機って何?という方は、ぜひここで自動織機の実物を見てください!
納屋(作業小屋)
佐吉の父親は大工でしたので佐吉もその手伝いをしていました。
しかし、貧しい家計を助けるために夜中まで機織(はたおり)作業をする母親を見て「母親を楽にさせてあげたい」「社会の役に立ちたい」という一心で、自動織機の研究、開発をはじめました。
といっても父親にばれないようにこの作業小屋の片隅でこっそりと研究していたそうです。
集会室
中は40名ほど収容できる研修ルームとなっています。
以前聞いた話では、トヨタグループの社員たちがここに研修に訪れるそうです。
裏山を展望台まで登ってみた!
ここから先、階段や上り坂が続きます。
自然探索路のようなコースですが、見事なまでに清掃が行き届き、柵や手すりも整備されています。
この地域の特産のみかんの木もたくさん植えられているほか、季節の花々や木々を楽しめます。
久しぶりにこんなに間近でトンボを見ました。
井戸
この井戸も佐吉が生活用水を通すために作ったもので、現在も稼働しています。
8月の午後の時間帯でしたが、木々が多いので涼しく、散策にはもってこいのコースです。この日はここまで登る人もほとんどなく貸切状態でした。
この記念館を訪れるのは3度目くらいになりますが、来るたびに山や建物の手入れ・整備が行われており、トヨタグループ、ひいては豊田家がこの地を大切にしていることが伝わってきます。
展望台
東屋周辺も整備中でした。
展望台からの東方向を望みます。
ここからは浜名湖や遠州灘の風景、さらにはお天気がよければ富士山も見えます。
この季節(8月頃)は無理だな・・・と思っていたらうっすら見えました!
佐吉の長男でトヨタ自動車の創業者である喜一郎氏も当地で生まれ、小さいころはこの付近でよく遊んでいたそうです。
自動織機の開発をする父親を間近で見つめ、そしてこの景色を見ながらどんな夢を持って幼少時代を過ごしたのでしょう?
今度は、展望台から反対側に佐吉の父・伊吉が植林したひのき林を見ながら山を下ります。
そして、またこちらも絶賛工事中です(笑)
生家
前出の写真、足場が組まれたあたりにあったものが1990年に移築復元されました。
内部も見学可能です(靴を脱いで上がります)
機織りする母親に寄り添う佐吉の姿。
休憩室
中では展示室で見たのと同じVTRが見られます。
2本のうちのもう1本をここで休憩がてら見ました。
テレビの横の本棚には懐かしい伝記シリーズが並んでいました。
地域の偉人ということで、豊田佐吉の本も小さいころ読みましたよ(^^)v
機織り機があり、体験もできるようになっているようです。
ここには管理人さんがいらっしゃって、私が入るとすぐに(奥の部屋から出てきて)冷房を入れてくれました。
整備も行き届いた上に、気配り(節約志向)まで・・・さすが世界のトヨタは関連施設まですごい!と思いました。
記念館周辺の豊田佐吉ゆかりの地
山口観音堂
激動の幕末の中、世の中が急速に変化することに焦りを感じた佐吉はここに仲間を集めて夜な夜な勉学に励んだそうです。
長州でいうところの松下村塾みたいな感じでしょうか。
あちらは政治思想で国を変えましたが、こちらは技術で世界に肩を並べるといったところでしょう。
車返しの坂
佐吉は、事業に成功した後もこの村に帰ってくる際には、「村の人たちが汗を流しているのに(人力車に乗って楽をするのは)罰が当たる」と、この坂で人力車を帰して歩いたそうです。
自分を育ててくれた村に感謝し、謙虚な姿勢を生涯貫いたそうです。
まとめ
この「豊田佐吉記念館」についてあくまでも私の私見ですが、積極的には宣伝されていないようで一般で訪れる人は少ない印象です。
しかし、遠州地域の住民として自慢できるとても素晴らしいスポットです。
世界のトップにまで登り詰めた企業の創業者たちが暮らしていた地が、いまなお昔の面影を残して大切に保存されていることを多くの方に知っていただきたいと思うのでした。
あわせて見学をおすすめしたい施設
トヨタ産業技術記念館(名古屋市)
名古屋市には、かつての工場跡地を残し、トヨタのシンボルである「自動車」と起源である「繊維」の歴史を紹介する大規模なミュージアムがあります。
名古屋駅からも(頑張れば)徒歩圏内です。
見学記もご覧ください↓↓
楽器と織物のまち 浜松市内にある企業ミュージアムなど
湖西市とは浜名湖をはさんで東の浜松市、遠州地域は世界の名だたるメーカー発祥の地です。
ホンダ、ヤマハ、スズキといった国内屈指の輸送機器・楽器メーカーの創業者ゆかりの展示館や企業ミュージアムなどがあります。
豊田佐吉記念館とあわせて訪ねてみてはいかがでしょうか。