富山県と関西電力が公募制で開催している黒部ルート見学会についての紹介記事です。
2006年に実際に参加しましたが、一般的な観光ルートでは体験できないレアでマニアックな体験がぎっしり詰まった見学会となっています。
立山黒部アルペンルートとの違い
黒部といってパッと思い浮かぶのは、黒部ダムと 立山黒部アルペンルート。
黒部ダムを中心にいくつかの乗り物を利用して大自然のパノラマが楽しめる観光ルートです。自家用車が乗り入れができない秘境であり、毎年多くの人が訪れます。
また、黒部川に沿って深い峡谷美を楽しめる鉄道路線である黒部峡谷鉄道(宇奈月-欅平)も、立山黒部アルペンルートとツアーで訪れることもが多い人気ルートです。
これに対して、黒部ルートは富山県と長野県境にある黒部ダムから黒部峡谷鉄道の欅平(けやきだいら)を結ぶ一般開放されていない地下ルートです。
GoogleMap上には、当然道はありませんので、多分このあたりを通っているんじゃないかというところを書き込んでみました。青色が立山黒部アルペンルート、緑色が黒部峡谷鉄道、赤色が黒部ルートです。
元をたどれば、いずれも世紀の大工事と言われた黒部ダム建設の資材運搬などのために作られたルートです。
この一般開放されていない黒部ルートは、現在も黒部川第四発電所など関西電力が管理する発電所などに向かう人たちの作業・点検ルートとして利用されています。
そのほとんどは風光明媚とは正反対に、地下空間をひたすら進むルート。
このルートを唯一見学できる手段が、公募による黒部ルート見学会です。
当選した人のみが、作業員たちが利用するのと同じ乗り物に乗って見学させてもらえるレアなルートなのです。
他のルートはお金さえ払えば利用することができますが、唯一このルートだけは、お金を積んでもダメ。運と努力により当選するしかありません!
見学ルートはこんな感じ
こんな秘境中の秘境(もちろん車の乗り入れも禁止)に現地集合しなければならないという見学会でありながら、3~10倍くらいの競争率という人気を誇っています。
私は2006年にこの見学会に当選して参加してきました。行ってみればその素晴らしさがわかります。 あの人気を博した番組「プロジェクトX」の王道ともいえる先人たちの汗の結晶が詰まった土木工事の現場そのものですから。
大人にとっては、夢の国なテーマパークより、超現実的なこっちの方がよっぽどテンション上がるのでは?と思っていたりします。
数年後には一般ツアーへ開放されることが決定
追加情報です。
実はこの見学会が2024(令和6)年以降、一般ツアーへ開放されることが決まりました。
お金を積んでも(当選しない限りは)参加できなかった見学会が、お金さえ払えば行けちゃうツアーになります。
また、今まで現地集合でしたので集合場所までの足の確保ができず断念していた方も、首都圏や国内各地からのツアーで参加できることになるというわけです。
今までのレア感が失われるのはちょっと残念な気がしますが、反対に考えれば、今までこのルートを知らなかった多くの人々に黒部ダム建設の偉業を知ってもらうことにもなります。
一方で、今までは参加費が無料だった個人での参加はできなくなるようなので、個人参加したい場合は、ここ数年が”最後のチャンス”となります。
いずれにしても日本人なら一度は見ておくべき価値あるこの見学会の内容を多くの方に知っていただきたいという熱い思いだけでお伝えしたいと思います。
冒頭から脱線話になりますが、私が参加したきっかけのご紹介から(笑)
この見学会を知ったきっかけ
2002年のNHK紅白歌合戦に中島みゆきさんが出演され「地上の星」を歌った3年後に黒部ダムに行きました。
もともとダム大好きに加え、みゆきさんファンの私♡
岩肌むき出しの厳冬の黒部のトンネル内で、生歌披露という衝撃的&感動的な映像に、ファンとしては「聖地」となったあの場所に立ちたい!という意気込みで。
ちなみに、他局では「どうせ口パクなんだろう・・・」となめていたそうですが、みゆきさんが歌詞を間違えたことで”生歌”が証明されたのです。あのトンネルでの音響調整にはNHKのスタッフさんたちが大変苦労されたというのも後のメイキング映像で見ました。
テレビでも「黒部ダム」と言っていたので、このダムに行けばあの場所が見られるのでは・・・と期待してダムの観光案内の人に聞きました。
私「紅白で、中島みゆきさんが歌った場所に行きたいんですけど・・・」
案内係「あれは、実はここのダムじゃないんですよ。このダムから10キロ下流の地下発電所で、通常は一般の立入りができないところなんです。」
ここまで来たのに玉砕だわ~ と思った直後
案内係「実は限定で入れるツアーがあるんです」
そこからは、かぶりつきでその詳細を聞きました。ただし、この時は秋で、その年の応募は既に締め切られていたので、翌年に備え資料を駅長室でいただいて帰ってきました。
その駅長室は、さらに8年後に幸運をもたらしてくれた場所です。
そんなわけで、中島みゆきファンはもちろんのこと、紅白歌合戦のあのシーンを見て感動しちゃった「プロジェクトXファン」のオジサンたちに超オススメです(笑)
黒部ルート見学会 当選までの道のり
黒部ルート見学会に申し込む前の準備
2006年度の応募開始を待って申し込みです。
申し込む前に、日にちとルートを決めなければなりません。見学会の集合場所は、以下の2か所
・黒部峡谷鉄道の欅平(けやきだいら)駅
・黒部ダム
集合場所へは直接自家用車で行くことはできません。さらに一方通行の見学となるため、解散してからの帰りのルートも確保しなければなりません。
いずれにしても最寄まで自家用車で行った場合は、有料で回送サービスを利用することになります。最短ルートで、なるべくお得に行くにはどうするかを、見学会の説明地図を見ながら考えました。
どちらでも回送は可能ですが、回送料金や宿泊地との兼ね合いで「欅平集合、黒部ダム解散のルート」で申し込みをしました。
申込時の制約事項
この見学会には応募や参加に関して条件があります。
一部抜粋です。
・小学5年生以上で、乗り物の乗降や階段の歩行に支障のない方
・同一見学日の重複応募は抽選対象外
・年度内の参加は1回限り
工事・点検用のルートなのでバリアフリーなどを求めることはできません。
個人的に追加させていただくと、乗り物内もかなり狭いので閉所恐怖症の方にはオススメできません。
参加人数、当選倍率は? 当選しやすい季節は?
参加人数は1日あたりそれぞれの出発地で各30名の計60名。
2022.6追記:
新型コロナ感染防止により、参加人数は1回あたり各12名となっています。
また、ワクチン接種済あるいはPCR検査での陰性証明が必要となっています。
応募倍率はホームページで公表されています。
私が参加した当時は平日日程しかありませんでしたので、一緒に行く友人と休みやすい曜日配列で申し込んだ記憶があります。とにかく早く行きたい一心で6月を選びました。
ここ数年の様子を見ると、欅平出発のほうが人気が高い様子。
季節に関しては、夏休み、紅葉シーズンの人気が高くなっています。
さらに近年は週末を利用して参加できる日程が設定されていてそちらも人気で10倍を超える日もあります。
というわけで倍率が比較的低いのは、「黒部ダム出発」の「シーズン初頭(5~6月)」「平日」という日程になるのではと分析しています。
当選通知がやってきた
そして、待つこと?ヶ月(昔過ぎて忘れてしまいましたが)当選通知がやってきました。(はずれた場合は連絡はこないようです)
その時は、「申し込めば当たるんだ」くらいに思っていたのですが、現地に行ってみたところ「4回目でやっと当たった」という人に遭遇して、私がいかにツイていたかを再認識したのでした(笑)
こんなルートで行ってきました
静岡県西部から自家用車で出かけたルートです。
(東名高速--東海北陸道)白川郷--(北陸道・黒部インター)--宇奈月ダム---宇奈月温泉 泊
(宇奈月駅で回送業者に車を預け)宇奈月駅---(黒部峡谷鉄道)---欅平駅---黒部ルート見学会に参加---黒部ダム---(黒部アルペンルート)---立山駅(自家用車受け取り)---東海北陸道経由で帰宅
平日2日間の休みをとるのが精いっぱいでかなりタイトなスケジュールとなりました。もう1日余裕があれば、室堂あたりに宿をとって立山の自然を満喫したり、富山でおいしいお寿司を食べたり、なんていうものいいですね。
次の記事では、実際に黒部ルート見学会に参加した内容をお伝えします。
相変わらず長文の記事ですがお付き合いいただければ嬉しいです。
★期間限定(2013年のみ)の50周年記念特別見学会の記事はこちら