2022年6月の北海道の旅。
帯広から一路国道38号線を走り約2時間。南富良野町の幾寅駅に到着です。「幾寅」というより”幌舞”といったほうがピンとくる方も多い映画の舞台となった駅です。
幾寅駅(いくとらえき)について
この駅があるのは南富良野町の役場の近く。”富良野”とはいっても、ラベンダー畑やドラマのロケ地があるエリアとは離れた静かで小さな町です。
近くにはアウトドアレジャーで人気のかなやま湖があります。
1999年に公開された高倉健さんの主演映画「鉄道員-ぽっぽや-」に登場する幌舞駅は実際にこの駅を使って撮影されました。
この駅、今も現役の駅舎ではありますが、実はワケあって列車が来ない状態が5年以上続いています。
平日だったこともあり、ほとんど人影がなくひっそりしていました。
幾寅駅の駅舎
大きく掲げられている「幌舞駅」映画での駅名です。
ホンモノの駅名は電話ボックスの上に目立たないようにひっそり掲げられています。
駅舎のまわりには、撮影に使われた車両、食堂といった建物もそのまま残り、まるでちっちゃなオープンセットのような雰囲気。今や南富良野町を代表する観光スポットとなっています。
さっそく”幌舞駅”の中へ入ってみました。
幾寅駅舎内
この駅舎、雰囲気を出すために外装などもつくりかえられているそうです。
私が到着したときにちょうど1組が帰るところでした。その後は誰も来ません。
駅舎内は無人ですが自由に見学ができます。写真撮影も特に制限はありません。
窓口にある芳名帳に、”来ました!”の証を残さずにはいられません。
ちょうどその上に映画を代表する高倉健さんのポスターが飾られています。
すぐにでもこのシーンを撮影したホームに行きたい気持ちを抑え、まずは駅舎内の展示ルームへ。
映画「鉄道員」ロケーション記念展示コーナー
詳しいストーリーは省略しますが、この映画は廃線寸前の駅で、自身も定年間近という男性の生き様をつづった浅田次郎原作のストーリーです。
私はリアルタイムではありませんが、テレビ放送などで何度か見ました。
もともと静かな映画が好きなのですが、高倉健さん晩年の頃にその魅力にはまってしまいました。(遅すぎた感はありますが・・・)
展示室内から待合室方面のようす
展示室入ってすぐの窓口の中には在りし日の高倉健さんの写真が飾られています。
どこまでがセットでどれが現役の設備かわかりませんが・・・
この映画には名だたる俳優さんに加え、志村けんさんも出演されていました。
私は「バカ殿」よりもずっと前「8時だよ!全員集合」のドリフを見て育った世代です。
映画では、志村さんが酔っ払いの炭鉱夫役を演じられていて、そのリアルで迫力ある演技に正直驚いた記憶があります。
屋外には、その”乱闘の舞台”となった「だるま食堂」の建物もあります。
2020年3月に新型コロナで亡くなる直前まで朝ドラにも出演されていて、これから俳優としての活躍が期待されていただけに本当に残念でなりません。
ここ「幌舞駅」では、ふたりの偉大な”ケン”さんの足跡をしみじみと感じることができます。
展示室内を奥に進むと、高倉健さんが着用された衣装や小道具、撮影風景の写真など、映画を知っていれば懐かしい展示となっています。
高倉健さんの直筆のサインを間近で見られるのもここならでは。
美寄も架空の駅名です。「美瑛」と「足寄」の合成でしょうか!?
展示室入口のところでは映画のワンシーンがブラウン管テレビから映し出されていました。
なおこの展示室は午前9時から午後5時までのみオープンとなっています。(駅舎はそれ以外の時間も立ち入り可能)
続いて線路に出てみました。
駅舎から少し階段を上ります。
”幌舞駅”ホームにて
雪はないけれど、これです。この角度!! ポスターの景色と一緒です。
本当なら映画と同じ冬の風景を見たいけれど、そんな季節には危険すぎてここに来られません(泣)
現役の駅名標です。
富良野方面です。
線路には雑草に交じって、ルピナスが花を咲かせていました。
この光景からもおわかりのように今ここには列車が走っていません。
”スタンドバイミーごっこ”もやりたい放題ですが、今回はそんな気分になれないほどセンチメンタルに。
幾寅駅の今
2016年の台風被害により、隣の東鹿越から新得駅間はバス代行輸送区間となっています。
復活させるには莫大な費用を地元自治体が負担しなければならず、富良野と新得駅間の廃止(バス転換)が現実的になっているそうです。
ドラマでの幌舞駅も廃止寸前の駅という設定でした。高倉健さんが2014年に亡くなられ、それとともに映画のストーリーがリアルになろうとしています。
再び駅舎に戻ります。
駅がセットだけでなく、現役であることを感じられる表示が残っています。


お言葉に甘えて「南ふらの情報プラザ」のトイレを利用させていただきました。
自販機や観光案内なども用意され、ちょっとした休憩スペースもあります。
駐車場について
特に駐車スペースについて表記はありませんでしたが、駅舎横(写真右端)に駐車しました。
代行輸送のバスが出入りしますので、駅舎前には駐車しないようお気を付けください。
まとめ
北海道には多くの名作映画のロケ地があります。その中でも知名度、雰囲気ともにトップクラスに入るのがこの”幌舞駅”ではないかと思います。
駅舎の中にも外にも地元の方々が心を込めて手入れされている雰囲気が感じられました。
それだけにこの駅の”宿命”が決まりかけている今、この駅から漂ってくるもの悲しさになんともいえない気分になりました。
しかしながら、私もこの駅をレンタカーで訪ねました。
列車の旅が情緒があっていいものだとはわかっているけれど、時間の制約を考えるとレンタカーになってしまうのが現実なのです。
現役の駅舎としての役割は終えるかもしれませんが、地元の人に愛されながら、良き昭和の時代を感じられるシンボルとして、これからもこの地にたたずんでほしいと思います。