2024年11月の台湾旅行記です。
台南ではVELTARの現地ツアーを利用して、コンパクトにタクシーでの観光。
台南中心部からほど近い安平地区を観光し、午後はこのツアーのメインとなる烏山頭ダムへ向かいました。
台南中心部から北東にある烏山頭ダムまでは約50km。高速道路経由で1時間弱です。
台湾の高速道路事情
高速道路に入るためのゲートはなく、無料のバイパスに乗るような感じです。
ETCのシステムはフロントガラスに貼ったシールに埋め込まれたチップを道路上で認識して、クレジットカードから決済されるのだそうです。
車載器も買わなくていいし、何よりゲートやらそこで働く人員も不要。
コロナの時もすごかったけど、さすがIT先進国。
先日、日本ではシステムトラブルで高速道路がえらいことになっていました。
もはや国内の銀行・高速などトラブル多発のシステムは台湾にお任せしちゃえ~。
走る道路は国道1号線。これも親近感わきますね~
右側通行を除けば、走っている車や標識はまるで日本ですね。
地名も日本みたいなものが出てきたり・・・六甲?
なお制限速度は100~110km/hです。
途中で分岐し、3号線に入って烏山頭へ。
ダムの堰堤がちらりと見えてきたところでインターを降ります。
日本のダムは山奥というイメージがありますが、こちらは高速道路からおりてすぐのアクセスの良いダムです。
烏山頭ダムの概要
台湾南部(嘉南平原)の農業かんがい用として、日本統治時代の1930年に造られたダム。
建設の指揮を任されたのが日本人技師の八田與一(よいち)氏です。
烏山頭(うさんとう)ダム、あるいは八田ダムとも呼ばれています。
ダムの形は、古来からの形式(ため池)であるアース式。
コンクリートをほとんど使用しないセミ・ハイドロリック・フィル工法(水の流れに乗って土砂の粒子を沈殿させる)という独自の方法により構築されました。
堤頂の長さ 約1.3km、堤高は56m。
また、引水路の総延長は16000kmで、ダム湖は上空からみると珊瑚(サンゴ)のような形をしているので珊瑚潭とも呼ばれます。
ダムの完成により嘉南平野は台湾の穀倉地帯と呼ばれる肥沃な土地になりました。
ダム湖周辺は「烏山頭水庫風景区」として記念館や史跡などの他、キャンプ場などの施設が整備されていています。
今回のツアーでは烏山頭水庫風景区を遊覧船乗船を含め2時間ほど観光しました。
烏山頭水庫風景区
全体図
ゲートで入場料を支払い公園内へ。(公式サイトによると おとなは200元)
かなり広いので公園内は車(乗ってきたタクシー)での移動です。
最初に訪れたのは地図左端にあるエリアです。
八田記念公園
八田氏が家族とともに暮らした住居や官舎などがあったエリアです。


手入れされた公園になっていますが、防空洞の遺構もあります。
当時は、福利厚生のために学校や病院も作られたそうです。
現在は、八田氏の住居の他、数件の家屋が復元されています。
日本語での解説もあります。
当時の写真やスケッチなどをもとに復元されているそうです。
屋内には写真や肖像画、家具なども設置されています。


庭には、夫人が子供を抱く像もあります。
家族とともに異国の地に赴き、多大な功績を残した八田氏ですが、第二次世界大戦によって悲しい歴史で幕を閉じます。
1942年5月、南方(フィリピン)に調査に赴く船が、アメリカ軍の攻撃により沈没し、殉職。
そして1945年の終戦から半月後、外代樹夫人もその後を追うようにダムの放水口に身を投げ命を落とします。
旧放水口
夫人が身を投げたのがこちらです。
現在は新しい放水口が造られ、こちらは予備となっています。
ダム好きとしては放流が見たいところでしたが・・・乾季なので。
車で移動する途中、余水吐きも見ることができました。
ソーラーボートでダム湖遊覧
このツアーでは、ダム湖遊覧も含まれていました。
私たち以外に台湾の団体ツアーのお客様で船内は満席。
日本っぽい法被を着た船内ガイドのおじさんがノリノリで説明をしていましたが、私たちにはさっぱりわからず・・・
しかし、最前列の特等席で私たちのガイドさんが要点を日本語で説明してくれました。
ベテランと思われる女性船長さんが舵をとっていました。
太陽光だけで動くボートなのでとにかく静かで揺れることもありません。
うとうとしたくなる時間ですが、ダムに来て寝ているヒマはありません(笑)
熱帯植物が鬱蒼としている導水路近くまで進んでいきました。


ダム湖のそばには、VIP用の迎賓館?のようなものもありました。
ダム好きとしては自然あふれる導水路よりもダムの広大さを感じる堰堤に萌えます♡
このダム湖、13平方キロということですが、どれくらい広いのか見当もつかないので調べてみました。
東京ドームに換算すると280個。黒部ダム湖の4倍ほどあるそうです。
しかしこれでも水は不足すると予測していた八田氏は、当時から上流のダムの計画も策定していたそうです。
1973年には台湾最大規模の「曾文ダム」が完成しています。
遊覧時間は約30分。
気温は30℃近くでしたが、(船室内から景色が眺められ)気持ちよく遊覧できました。
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八田與一氏銅像と墓
ダム湖に向かって物思いに耽る八田氏の銅像は1978年に造られました。
奥には日本式のお墓もあります。
日本では知る人が少ない八田氏ですが、台湾での功績は大きく、多くの台湾人から尊敬されているといわれ、供花も絶えないようです。
詳しくわかりませんが式典の準備中で、日本語も聞こえてきました。
八田記念展示室(ミュージアム)もあるそうですが、そちらは見学なしでした。
とはいえ、ダム観光が3時間近くもあり、詳しい説明もしていただき満足でした。
帰りは再び高速道路を経由し、途中新化老街に立ち寄りましたが、写真タイムのみ。


台南駅からバスで40分ほどのアクセスとのことなので、こういうところは個人で気ままにぶらぶらしたいです。
渋滞もなく午後4時前には台鉄台南駅に到着しました。
降車場所はリクエストに応じてくれます。この駅舎見たかったので寄り道。
外装はまだ工事中でしたが、内部はすでにきれいに修復されています。
まとめ
公共交通機関では行きにくい台南のスポットを凝縮して楽しめたツアーでした。
ご一緒したご夫婦も「烏山頭ダムが目的」とのことで話も合いました。
ドライバー兼ガイドさんも運転は若干荒っぽいところもありましたが(苦笑)、とても熱心に案内してくださり感謝です。
台湾の方たちは、建造物やインフラなど日本人の作ったものを本当に大事にしてくれています。それに携わった人への感謝の気持ちも忘れないのは日本人としても嬉しいことです。
私はダム好きが縁で八田氏のことを知りましたが、何度も台湾を訪れると日本との歴史や関係をさらに知りたくなります。
グルメ以外にもこんな楽しみ方もあることをぜひ知っていただきたいです。