2020年9月、世界遺産でもある比叡山延暦寺を4年ぶりに訪ねました。
今回のお目当ては東塔エリアにある国宝の根本中堂。レアな”現場”が見られる”今だけ”のようすをご紹介いたします。
4年前の様子はこちら
延暦寺は、1571年に織田信長の焼き討ちにより多くの堂宇が焼失しました。
その後、豊臣秀吉や徳川家康たちにより堂宇などが再建されました。
60年ぶりに全面改修中
東塔(とうどう)エリアにある根本中堂と回廊は、60年ぶりに10年がかりの大改修に入っています。
根本中堂は一般的な寺院の本堂にあたる重要な建物で国宝に指定されています。
手前にある回廊も趣のある建造物で、これらは延暦寺を象徴する建物です。
現在の建物は、徳川三代将軍 家光の時代(17世紀中ごろ)に建造されたものです。
(2016年8月撮影)
2016年に訪ねたときは、回廊の柱などは経年により塗装もかなり剥げ落ちていた印象でした。すでにこの時、改修工事の準備に入っていました。
実は工事現場(建設でも修復でも)が大好きな♡私。これは10年の間に再訪するぞ!と決めていました。
この記事では2020年9月下旬に拝観した時のようすをご紹介します。
拝観料とチケットの種類
東塔のチケット売場です。
今回は東塔エリアのみの拝観ですが、東塔だけの拝観も、西塔、横川(よかわ)エリアを含めて拝観するのも料金は同じでおとな1000円です。
前回訪ねた時より300円も値上がりしていたのでびっくりしましたが、3つのエリアをすべて巡ればお安いくらいかもしれません。
なお、これに国宝殿を加えたチケットは1500円になります。
境内を入って根本中堂に向かって進みます。
2020年9月の工事進捗のようす
この大きな石碑の横の坂を下ると根本中堂があるのですが・・・
じゃーーん!
大きな素屋根(すやね)にすっぽり覆われ、建物は見えません。
この姿に喜ぶ人はあまり多くないかもしれませんが、この中に”今だけの特別”感を得られる感動的な場所があるので、がっかりしないで進みましょう!
この記事を読み終えるころには素屋根の中の工事現場に興味津々になること間違いなし!
素屋根入口
唐門風に仕上げた庇(ひさし)が粋ですね。
正面の壁面には工事のようす(予定)が写真入りパネルで解説されています。
入口を入ってすぐに靴を脱ぎ(下駄箱に預け)歩くことになります。シーズンかかわらず靴下を履いていくことをお勧めします。
2020年9月現在、おもに回廊の塗装を剥がす作業(掻き落とし)が完了し、木の本来の色が出ていました。
掻き落とした木材の補修などをした後、弁柄と鉛丹を混ぜた塗料による塗装(ちゃん塗と丹塗)が行われるそうです。
回廊を歩きながら間近で柱を見ることもできますし、根本中堂での拝観も従来どおり可能です。
1200年消えないという不滅の法灯が灯る内陣(ご本尊がある場所)はいつ見ても厳かな雰囲気が漂っていて心が落ち着きます。
”修学ステージ”から工事の様子を見学
工事のようすを見ながらお堂の拝観はできましたが、撮影は一切禁止でした。
しかし”今だけ”の特別な場所から、本来なら見ることのできない角度から建物のようすを見て、写真撮影も可能なフロアがあります。
修学ステージと名付けられた見学用通路を上層階へ向かいます。
カーペットが敷かれた階段やフロアは仮設を感じさせないしっかりとしたつくりです。
こちらのエリアから撮影が可能となっています。
この日は作業している職人さんが少なかったのですが・・・
普段は絶対に見られない回廊の唐門の真上からの様子です。
とち葺きの屋根はすべて剥がされ、骨組みが見えている状態。壁側には新しい建材(サワラの木)が用意されています。
以前、とある修復現場でお聞きしたのですが、(国宝も含む)文化財というものは損傷の激しい部分を差し替えながら、利用できるものはそのまま使い続けていくのだそうです。
余談ですが、地震で損傷した熊本城の天守がわずか3年で復旧できたのは、重要文化財ではなかったから。一方で重要文化財に指定されている櫓(やぐら)や石垣は倒壊した材料を再び組み合わせていくこと(原状回復)が求められるためかなりの年数がかかるそうです。
こちらは根本中堂の屋根
視界が今いちです。作業用通路に登りたい気持ちを抑えつつ・・・
工事の進捗状況によっては見学ルートも変更していただけるとありがたいかな、と。
ズームしてみました。
銅板の屋根瓦が取り外され、その下の部分の取り換えなどが行われています。葺き直すく銅板瓦はなんと28000枚!
現在は、根本中堂の柱や屋根の修理ですが、年明けぐらいには瓦の葺き替え、さらに数年後には建物の彫刻や漆塗りなどの工事も見られると思います。
近所ではないので頻繁には行かれませんが、完成までにもう一度くらいは足を運びたいと思いました。
根本中堂の工事はいつまで?
2016年(平成28)からスタートした根本中堂の改修は、2026年頃までの予定で行われます。
そしてここまで来たらもうひと踏ん張り。
根本中堂の素屋根を出た正面の急な階段を上ります。
文殊楼から見る風景もおすすめ
そして、この階段の上にある建物が、延暦寺(東塔)の山門にあたる文殊楼(もんじゅろう)です。
文殊楼
智慧を司る仏である文殊菩薩が祀られています。お堂は2階にあります。
前回は(階段が急ということもあり)中には入らなかったのですが、階上から読経の声が聞こえてきたので引き込まれるように急な階段をよじ登ってしまいました。
現存天守に負けず劣らずの絶壁階段に、城めぐりや寺社巡りを楽しむためには、日ごろから足腰鍛えておかないと続けられないとつくづく思うのでした(苦笑)
夕方のお勤めでしょうか、僧侶の方がおひとりで読経されていたのでしばしその後ろで聞かせていただきました。
御朱印(根本中堂)
前回に続き、今回も根本中堂の御朱印をいただいてまいりました。
御本尊の薬師如来の別名 「医王」(医は旧字体)が記されています。
【2024.9追記】
再び工事の進捗を確認に延暦寺までいってまいりました。
日々刻々と生まれ変わる国宝 根本中堂の大改修の現場、おすすめです。
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