2020年10月の愛媛の旅。
大洲城の後は、共通入場券を購入した「臥龍(がりゅう)山荘」へ向かいます。古くから大洲藩主などが別邸として利用していた風光明媚なスポットです。
臥龍山荘について
肱川(ひじかわ)の景勝地 臥龍淵にある別荘。
大洲藩3代藩主 加藤泰恒がこの地が龍が伏せた姿に似ているとして”臥龍”と命名。幕末までは藩主の別荘として利用されてきましたが、明治時代には一時荒廃します。
その後、地元出身の貿易商 河内寅次郎が余生を故郷で過ごしたいと財を投じ、棟梁に地元の中野虎雄を抜擢。10年の構想と工期を費やして造った建物と庭園が現在残され公開されています。
そのこだわりと豪華さは”大洲の桂離宮”とも言われ、建物は重要文化財にも指定されています。
実はこの半月前に京都の桂離宮に行ったばかりの私。
愛媛の旅の中でこの大洲を訪ねたのも100名城目的で、臥龍山荘のことは直前まで知りませんでした。偶然の出会いに感謝です。
臥龍山荘の場所と駐車場
大洲城とは城下町の対極にあるので車で移動し、街並みの中にある物産施設「あさもや」の無料駐車場を利用しました。
閉館間際まで臥龍山荘にいたので、駐車場に戻るころにはお店も営業終了~(T_T)
この駐車場から臥龍山荘までは約500メートル。ゆっくり歩いて10分くらいです。大洲のレトロな街並みを歩いていくので退屈しません。
臥龍山荘にも駐車場は若干あるようですが、道が狭いので「あさもや」の駐車場が推奨されています。
臥龍山荘に到着
お城のような石積みの上に御所風の土塀が張り巡らされています。敷地は広くないけれどコンパクトな京都?がこの中に詰まっています。
下の写真は退出後に撮影したもの。
私がこの日最後の訪問客でしたので門が閉じられた直後のショットです。
午後4時くらいに到着したのですが、ちょうど先客の1組が帰るところでした。その後は新たに来る人もなく、完全に貸し切り状態での見学となりました。
なお、この入口に面してきれいなトイレも整備されています。
臥龍山荘の建物と庭園
臥龍院
臥龍山荘の中でいちばん大きな建物。茅葺屋根の素朴な建物ですが、桂離宮や修学院離宮に倣って造られたとされています。
門をくぐってすぐにこの建物内で入場受付をし、室内から見学スタートです。
(写真は室内見学の後に庭園側から撮影したものです)
清吹(せいすい)の間
別名「夏の部屋」と呼ばれ、北に面して造られており、涼しく過ごせるような工夫がされています。
透かし彫りは京都高台寺の蒔絵を模した「花筏」
壱是(いっし)の間
書院造りの様式を持つ格式の高い部屋です。花頭窓は桂離宮の御殿のものを参考につくられています。
建材の選定ももちろんですが、京都などで活躍した名工と呼ばれた職人たちによる、贅を尽くした細工が施されています。
建物の中にはラジカセが置かれていて手動でスイッチを押すと説明が流れるしくみ。
一部の部屋では、スタッフの方が直接説明してくださり、質問などにも答えていただけました。
霞月(かげつ)の間
丸窓の奥には仏間があり、ろうそくを灯すと月明かりのようになることから霞月の間と呼ばれています。天井は和紙で仕上げられています。
あえて暗い色にした襖には、こうもりの柄の引き手がつけられています。
また壁の一部を塗り残すなど、随所にこだわりが感じられます。
このような壁の装飾は桂離宮の建物で見ました。
建物の中から眺める庭園も、肱川を借景として計算されつくした配置になっています。
敷石ひとつとっても、こだわりが感じられます。桂離宮でも自然石と加工石を組み合わせた演出が印象的でした。
ここからはいったん外に出て庭園を歩きながら不老庵まで向かいます。
庭園は神戸の庭師が10年の構想で造ったもので、さまざまな樹木が植えられ、燈籠や敷石、石積みなど匠の技が随所に見られます。
苔庭も見事で、珍種の苔も生育しています。
10月でこの風景なので、紅葉はさぞかし素晴らしいと思います。
知止庵
とても窮屈そうな建物ですが(苦笑)もともとは浴室だった建物を戦後改修して茶室にしているそうです。
氷室(ひむろ)
崖の中を天然の冷蔵庫として活用していました。
ん? これも昔からここにいるのしから? 謎・・・
不老庵
臥龍山荘を象徴する建物で、肱川に面して懸け造りで建てられています。
この建物は舟をイメージして造られています。内部は舟底天井になっており、月あかりを反射するように計算されているのだそうです。
この開放感に思わず寝そべって天井を眺めていたい気分です。
今歩いてきた庭園側も美しい景色です。
ところで、この臥龍山荘が紹介される写真として必ず登場するのがこの不老庵を川から撮影したもの。
ここまで来たら、この建物が佇む様子を反対側から見てみたい!と思うのが普通ですよね? 建造物マニアの私だけかしら?
一般立ち入りできない場所からやドローンで撮影した写真っていうのもありますが、河原を見ていると車が行き来しているので不可能ではない様子。スタッフの方にお聞きしたところ丁寧に行き方を教えくださいました。
車でなら5分ほどの河原から見られるのです!
しかし「沈下橋を渡るんですけど・・・」と言われ、瞬間的に「それ無理!」と後ずさりしそうになりましたけど、高知にあるような欄干のない橋ではなくてホッ。
写真の赤い部分が河原へ渡る沈下橋(潜水橋)です。
実際はこんな橋でした。
河原から眺める懸け造りの不老庵
午後5時頃で曇り空の中ではこれが精いっぱいでした。(若干色加工しています)
しかしあの居心地のよさそうな不老庵もここから見るとちょっと怖いですね。
大洲というとお城くらいしか名所を知りませんでしたが、共通入場券で訪ねた臥龍山荘が予想以上に良い場所でしたので、愛媛県を訪ねる方にぜひおすすめしたいと思います。
この大洲にはもうひとつ気になるスポットがありましたので次回に。