広大な面積を有する伊勢神宮には、1000年以上受け継がれてきた貴重な伝統を継承・紹介する文化施設(博物館と美術館)があることは意外と知られていないかもしれません。
平成25年の式年遷宮を記念して、外宮の入口にできた「せんぐう館」は立地的にも訪れやすい場所ですが、それよりも前から公開されていて、国内屈指の美術品や神宮に関わる貴重な史料を所蔵展示する知る人ぞ知る施設を紹介します。
建物だけでもみごたえある神宮の博物館
これらは、別宮 倭姫宮のある倭姫文化の森の中にあります。
敷地内には、神宮徴古館、農業館、そして神宮美術館の3つの施設があります。
入館料や開館日、開館時間について
3つの施設(神宮美術館、神宮徴古館、農業館)をお得にまわれる共通券は、おとな700円です。(徴古館と農業館のみ、または神宮美術館のみは各500円)
休館日:原則木曜日(祝日の場合はその翌平日)、年末年始、臨時休館日
開館時間:午前9時~午後4時(観覧は午後4時30分まで)
※神宮美術館は、平成31年2月28日までメンテナンスのため長期休館となっています。
神宮徴古館(じんぐうちょうこかん)
冒頭の写真が神宮徴古館の建物(全景)です。
レトロ感あふれる建物の外観だけでも見る価値があります。
ルネッサンス様式の建物は明治42年に建てられたもので(戦災による焼失のため昭和28年に改修)、日本で初めて造られた私立博物館です
まるで迎賓館(赤坂)を思わせるような雰囲気・・・と思ったら、赤坂の迎賓館を手掛けた片山東熊氏の設計と聞いて納得です。
伊勢神宮では、建物をはじめ、織物や工芸品などの神宝がたった20年で「お役御免」となり、再び新しいものが作られて奉納されます。
もったいない気もしますが、これが伊勢神宮の1000年以上続く伝統。これにより人間国宝などの技術も継承されていくのです。
見学の目玉は、平成25年の遷宮で撤下(てっか)された神宝や式年遷宮の行事で使われる御装束など至近距離でみられるのは大変貴重です。
※撤下とは、神様に奉られてものが役目を終えて下げられたもの
また、同じく遷宮で役割を終えた御饌殿(みけでん)の一部が実物大で展示されています。
平成24年に開館した「せんぐう館」と重複していると感じる部分もありますが、徴古館はその先駆けともいえる施設。立地的に訪れる人も少ないので、時間や周囲を気にせず、じっくりと見学できるのがありがたいです。
館内をじっくり見学して外に出ると、まるでスコールのような雨が止んだところでした。
前日から、雨雲を連れまわしているようです、私。
農業館
こちらは、小ぶりな建物ですが、平等院鳳凰堂をイメージしたものだそうです。
こちらも片山東熊氏の設計で、明治24年建築されています。
時代を感じる古い木造建築で、内部も木組みがよく見えるつくりになっています。
日本初の産業初物館でもあり、展示テーマは「自然の産物がいかに役に立つか」
古来から私たちの食生活と深いかかわりのあるコメ作りと、日本の近代産業の発展に大きくした繭からつくられる生糸に関する展示です。これらについては皇室とのかかわりも大変深く、皇室から賜った品々も展示されています。
地味な内容ですが、貴重な展示品を見ることができます。
神宮美術館
第61回式年遷宮(1993年)を記念してつくられた施設です。
こちらは、京都の迎賓館を思わせるような落ち着いた和風の建物で、大江宏 氏の設計によるものです。
展示作品は、文化勲章受章者や文化功労者、人間国宝など錚々たる芸術家たちが奉納した逸品揃いです。作品のジャンルも、絵画(日本画、洋画)から彫刻、書、版画など多岐にわたります。
私自身アートにはあまり詳しいわけではありませんが、見学当時の展示品として伊藤裕司氏の漆芸作品(日本神話に基づいた組作品)は、はじめて見る技法に引きこまれてしまいました。
所蔵作品が多く、頻繁に展示替えも行われるので訪れるたびに新しい作品に出会えそうです。
美術館を囲む庭も美しく、真夏でなければゆっくり散策をしてみたい空間です。
こちらは、半年後に再び訪れた際の様子。
2018年1月 雨でした。なかなかベストシーズンとはいきませんが・・・
にぎやかなおかげ横丁も楽しいのですが、たまには、静かに伊勢神宮の歴史と芸術触れる散策も良いものです。
すべての施設と倭姫宮を巡って所要1時間半ほどでした。
地図やリーフレットもよくできていて、散策やこのようにブログにまとめるのにも役に立ちますm(__)m
この後は、再び別宮めぐりへ
公共交通機関(バス)でのアクセス
外宮と内宮を結ぶ路線バス(51系統)で「神宮徴古館」下車
平日日中で1時間に2~4本、休日は2~5本ほど出ています。
車でのアクセス
外宮と内宮(直線距離で4kmほど)の中間地点にあり、大鳥居が目印。
無料駐車場も完備されています。